1.1.ⅱ.「科学技術の智プロジェクト」の継続活動

2007(平成19)年度末にこれまで述べてきた「科学技術の智プロジェクト」の報告書が作成された後、2008(平成20)年度以降も前述の具体的な方策を意識しながら種々の継続活動が行われてきた。

 

(1)科学技術リテラシーの普及

1)科学技術リテラシーの発表

「科学技術の智プロジェクト」のメンバーは、学会等で科学技術リテラシーの発表を行ってきた。例えば、次のような活動である。

・国内外の諸学会での講演:日本科学教育学会など

・サイエンスカフェ:サイエンスアゴラ、お茶の水女子大学など

・地域や大学での科学フェスティバル:三鷹など

・科学講演会:名城大学など

2)科学技術リテラシーの公開

「科学技術の智プロジェクト」のメンバーは、学会誌等で科学技術リテラシーの研究成果を公開してきた。例えば、次のような活動である。

・科学技術振興機構(JST)『Science Window』(サイエンスウィンドウ)2007年12月号、2008年7月号、2010年4月増刊号「水を知る旅に出よう」、2010年10~11月号(資料4参照)

・日本科学教育学会『科学教育研究』2008年Vol.32,No.4、特集 科学的リテラシー

 宇宙・地球・環境科学(2008年Vol.32,No.3)、物質科学・数理科学(2009年Vol.33,No.1)

・日本学術会議『学術の動向』特集 全ての国民のための科学リテラシー 「科学技術の智」プロジェクトの目指すもの 2009年4月号

・国立科学博物館『milsil』(ミルシル)2009年第5号より連載「科学技術の智を語る」

3)科学技術リテラシーの反映

小中高校の理数教育に関しては、現行の学習指導要領(2009・2010(平成21・22年)告示)の中学校・高等学校の理科や中学校の技術科には、科学技術と人間(中学理科)、科学と人間生活(高校理科)、生活や産業の中で利用されている技術(中学技術)など、科学技術リテラシーの考えが反映されていると思われるところがある。

 

(2)科学技術リテラシーの利用

1)科学技術リテラシーの使用

「科学技術の智プロジェクト」が作成した科学技術リテラシーは、科学博物館等で使用されている。例えば、次のようなものである。

・科学博物館での科学コミュニケーションコース:国立科学博物館など

・高等学校での科学リテラシーコース:横浜サイエンスフロンティア高校など

・サイエンスリテラシー講座:三鷹ネットワーク大学など

2)科学技術リテラシーのICT化

科学技術リテラシーの全報告書(8冊)がJST 科学コミュニケーションセンターのサイトを通してスマートデバイスでも読めるようになった。また、「科学技術の智プロジェクト」の活動の経緯と成果も、同センターのアーカイブに電子データとして維持されている。

 

(3)科学技術リテラシーの発展

1)科学技術リテラシーの活用

東京大学では、大規模公開オンライン講座(MOOC)の取り組みに、電子化したリテラシーの報告書を活用できないかを模索している。

2)科学技術リテラシーの深化

「科学技術の智プロジェクト」のメンバーは、科学系博物館における科学リテラシーや学校教育における数学的リテラシーなど、科学技術リテラシーをある領域に特化した形でその内容を深化させている。この成果は、JSTの科学コミュニケーションセンターのサイトの旧「科学技術の智プロジェクト」の「「科学技術の智」プロジェクトが創りだしたもの」に掲載されている。

3)科学技術リテラシーの拡張

 日本学術会議では、大学教育の分野別保証のための参照基準の作成を進めているが、これは科学技術リテラシーの大学版と見ることができる(日本学術会議,2010)。なお、この日本学術会議の委員会の委員長は、科学技術リテラシーの研究代表であった北原和夫教授である。

4)科学技術リテラシーの調査

「科学技術の智プロジェクト」では、2009(平成21)年度に、科学技術リテラシーを普及するには、理科を教える教員の意識を調べる必要があるとして、日本科学技術振興財団において、小学校教員の科学技術リテラシーの修得・リフレッシュの実態を調査し、その結果を報告書としてまとめて公表した(日本科学技術振興財団,2010)。なお、2011(平成23)年度にはこの第2期調査が行われている(日本科学技術振興財団,2011)。

なお、科学技術振興機構理科教育支援センター等によっても次のような同様な調査が行われている。平成20年度小学校理科教育実態調査及び中学校理科教師実態調査、2008(平成20)年度高等学校理科教員実態調査報告書、2010(平成22)年度小学校理科教育実態調査、2012(平成24)年度中学校理科教育実態調査。

5)科学技術リテラシーのもとでの協働

日本科学教育学会の課題研究では、2010(平成22)年度から4年間、技術教育を中心に理科教育、数学教育の研究者が集まり、学校教育において科学技術リテラシーを目指した技術教育、理科教育、数学教育のあり方が探究された。この研究には科学技術の智のメンバーも参加し、デザインやモデル化などが論じられた(谷田親彦,大谷忠(2014)「科学技術リテラシーの発展に向けた技術教育と理数教育の連携・協働-デザイン・モデリングの観点からの技術・理科・数学の位置づけと関係の在り方-」『日本科学教育学会年会論文集』38,pp.79-82)。

2012(平成24)年度には、「科学技術の智プロジェクト」は「科学読物研究会」からの呼びかけで、科学読物を紹介する本の監修を行った。その後、この本は、『りかぼん 授業で使える理科の本』(りかぼん編集委員会編著・北原和夫他監修,2012,少年写真新聞社)として出版された。