3.2.ⅰ.成果

 「科学技術の智プロジェクト」とその継続活動を受けて、科学技術リテラシーの向上のさらなる推進のために、本報告の第2章、第3章において、次の五点が論じられてきた。

(1)コンピテンシーとリテラシー

科学リテラシーを身に付けることができれば、どんなに良いことがあるのだろうか。幸せになれるのだろうか。心豊かになれるのだろうか。安心して暮らすことが出来るようになれるのだろうか。このような素朴な疑問に対する答えは、もしかするとコンピテンシーを理解することで得られるかもしれない。OECDがPISA調査と同時に開始したDeSeCo(Definition and Selection of Competencies)プロジェクトを紹介しつつ、コンピテンシーと科学リテラシーの関係を考えた。

(2)「日本」という土壌

日本で科学技術リテラシーを普及させるためにはどうすれば良いかを検討するには、日本という「現場」を踏まえた上での議論が必要となる。そこで、日本の教育現場での智のあり方について検討するとともに、異文化間コミュニケーションの分野で指摘されている日本のコミュニケーション・スタイルについて紹介する。さらにそれらを踏まえた上で、日本で科学技術リテラシーを育成させるために学校教育現場で可能ではないかと思われる取り組みを提案した。

(3)生活リスクとリスクリテラシー

科学と社会とのあり方を再考する必要性が高まるなか、生活リスク、および、これに関わるリテラシーを考える今日的意義も大きくなっていると思われる。そこで、生活リスクリテラシーの構成要素を整理するとともに、科学リテラシーと生活リスクリテラシーとの関係性を検討した。さらにそれらをふまえ、生活リスクリテラシーを検討する際の課題を指摘した。総じて、生活リスクリテラシーの涵養に向けた具体的方策の手がかりを得たいと考えている。

(4)日本の戦後教育の変遷と課題

科学技術リテラシーの育成・普及に関わると思われる日本の教育の諸要因について、理数教育を意識して歴史的、比較的に考察した結果を、高等教育の量的拡大と制度の変遷、また、社会教育・生涯教育・生涯学習の変遷、さらに、科学技術教育・理数教育について触れながら述べた。これらの論点として、民主主義と科学教育の関係、高等学校の大衆化と非理数系の扱い、学校教育と生涯学習の違いなどを挙げた。

(5)科学技術リテラシーを巡る議論の射程についての省察

科学技術リテラシー涵養活動を推進していく上で考慮することが重要であると考えられる論点、特に、科学技術リテラシー涵養活動を推進する主体が、その議論・活動の背後に無批判・暗黙のうちに据えてしまいがちな社会の将来像や科学と社会の関係性についての前提・根拠といったものに対して省察を行うことの重要性について論じた。

これらの成果に加え、報告会(2014(平成26)年12月23日開催)において、本調査・研究の報告をすると共に、本調査・研究の共同研究者と外部の参加者がフューチャーセッションを行い、共に今後の「科学技術リテラシー」の定着・普及について考え合い、提案を行った。